空白の翻訳

by 1031jp

DO YOU BELIEVE IN MAGIC

キエるマキュウの超重要盤『TRICK ART』を初めて聴いたときのことを思い出す。ひどい下ネタとくどいギャグの合間を縫って切れ味抜群の必殺フレーズがキマりまくるリリックと、ふたつの声と、ヤバいトラック。それらのバランス。

 

昨夏のこと。そのふたつの声のうちのひとつの持ち主であるMAKI THE MAGICの突然の訃報には、誰もがいつどんな風にいなくなってもおかしくないことをいいかげん理解しつつあったとはいえ、それでもじゅうぶんにびっくりした。

 

ほかにもたくさんの別れや悲しみが訪れては過ぎていき、たぶんそのいくつかをすっかり忘れ、年が変わり、冬が去り、東京で桜が開花した日にドロップされた彼の追悼盤『DEDICATED TO MAKI THE MAGIC - MAGIC MAGIC MAGIC』は、泣かされながら笑わされる、作り手の思うように振り回される悔しさが気持ちいい。参加アーティストの顔ぶれを挙げるまでもなく、彼がどんなに愛されていたか痛いぐらい伝わってくる。もちろんトラックは最高にクールだし、畑違いのぼくが憧れるヒップホップのかっこよさってこういうところだよなあと、しみじみ感じさせられるアルバムだ。

 

トラック間には彼のMCが使われている。優しさの塊のようなそのMCを泣き笑いで聴きながら、ライヴ録音からこれらをピックアップし編集した人がいることについて考える。シンプルに、愛情や優しさの応酬といったものを感じる。こういうものに触れたとき、ぼくは人間の人間くさい部分を愛しいと思える。

 

CDをオンラインで購入した際の、口座や住所などに関する事務的なメールがぼくにとって彼との唯一の直接的なやりとりとなった。そういった事務仕事をあからさまに自分で行っている点もとてもヒップホップ的だなどと、変なところで興奮したのを覚えている。

 

さておき。

 

 

“I DO ヤラネバ マキュウFOREVER”

  

春が来た。ぼくもやらねば。

 

 

 

DEDICATED TO MAKI THE MAGIC - MAGIC MAGIC MAGIC

DEDICATED TO MAKI THE MAGIC - MAGIC MAGIC MAGIC

 

 

TRICK ART

TRICK ART