空白の翻訳

by 1031jp

グランドコントロール

 曲や歌詞のアイディアとして、いつか世に出る日が来るのかどうかも分からない言葉たちを日々めそめそとぐずりながら書き溜めているノートがある。中身の一部は商品になり、お化粧をされ、レコード屋さんに並び、誰も買わない。

 さて、ラヴ・レターであり、辞世の句であり、泣き言であり、言い訳であり、弱音であり、甘えであり、嫉妬であり、告白であり、懺悔であり、怒りであり、呪いであり、謝辞であるところの言葉たちで埋め尽くされたこのノート、今使っているものがいっぱいになった。これは例えデートしてくれようとも誰にも見せるわけにはいかないし、間違っても僕の死後、遺族や遺されたメンバー、スタッフたちの手で発掘され発表されるようなことがあってはならないので、やや曇った平日の昼下がり、ビル・エヴァンスがイントロをキメ終えたところで僕は立ち上がり

椅子とカフェオレと一緒にこのノートをベランダに持ち出すと

どこかで布団を叩く音がする

 

さあカフェオレの冷めないうちに

マッチでノートに火をつけると

真っ黒な煙が

叫び声とも泣き声ともつかぬ

孤独の極致を想像させるような悍ましい音を立てて

空に昇っていき

それはやがて小さな粉になって降ってきて君の部屋の写真立てとか

君の部屋のオルゴールとか

君の部屋のthe HANGOVERSのCDとか

の上にちょっとずつ積もっているから見てみろ

 

見てみろ

 

 

それは僕たちが埃と呼んでいるものだ

 

 

この過程が何度も繰り返され

積もり積もったそれが

やがて星じゅうを黒く覆い尽くすと

 

まだ宇宙のどこかで

ドラム缶に腰掛けて僕たちを見下ろしているはずの彼は

青くないためにそれが地球であると分からず

というか認めず

 

 

それで

 

 

この星に愛の御業を行うのをやめたのです